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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1296号 判決 1948年12月18日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人内山昇及び同辯護人小田垣常夫の各上告趣意は、別紙記載の通りである。

辯護人小田垣常夫上告趣意書について、

原判決には、所論の個所に所論のような文字の挿入削除がなされているに拘らず、その上部欄外には「削除一字」と記載されているのみで、挿入字數の記載がないことは、所論のとおりである。即ち所論の挿入は刑事訴訟法第七二條に定められた方式を缺いて居る。併しながら、判決書における文字の挿入が法定の要式を欠いた場合にも、同法第四一〇條第二一號のような規定がないから、直ちにこれを無効とすべきでなく、その効力の有無は、専ら、裁判所が諸般の状況を勘考して、自由に判斷すべきものである。よって所論挿入の文字について見るに、同個所には原判決末尾の判事荻原潤三の署名下の印と同一の印が押捺してあるばかりでなく、この印は同判決の他の個所において適式に削除された文字の上に押捺してある印及び同判決の契印とも全く同一のものであるから、右挿入の文字は判決作成者によって、正當に記入されたものにして、これが挿入字數の記載なきは右作成者が遺脱したにすぎないものと認められる。從って、この挿入の文字は有効に同判決書の内容をなすものと云うべく、その無効なることを前提とする論旨は凡て理由がない。(その他の上告論旨は省略する。)

よって、刑事訴訟法第四四六條により、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)

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